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手応え十分!自分をダイレクトに表現するアートブック「ZINE」の作り方(上)

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こんにちは。
先週の記事で、NYのアーティストたち自身の手によるアートブック「ZINE」をご紹介しました。実は最近、東京でZINEのイベントを毎年開催されているデザイナーの方から、ZINEの作り方について教えてもらうことができました。
そこで、実際にサンプル作品を作りながら、「ZINEの作り方」の一例を上下2回に分けてご紹介したいと思います。読者の皆さんもぜひ一度、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。


「ZINE」(ジン)は、アーティストが自分で編集・デザインを行い、場合によっては印刷・製本まで自分で行うもの。当然、書店に並んでいる美術書や画集などに比べると、モノとしてのクオリティでは及ばないかも知れませんが、手作りであればこそ、自由に作りたいものを作って自分を表現できますし、大量印刷された書籍にはない、「1点もの」の存在感が魅力になることもあります。

しかし、誰もが冊子の編集スキルを持っているとは限りません。「自分自身を表現する」ことを目的に、本の企画から編集・アートディレクション・デザイン・印刷・製本までを全て自分で考えないといけないため、いいものを作ろうと思うと、相当のエネルギーが必要になります。逆にいえば、一冊をしっかり作り上げることで、冊子づくりのトータルな力量が身につくという、いい訓練にもなるはずです。

[step1] 作品のイメージを考えて、掲載作品を選ぶ
さて、どんな作品にしようかな。
何を作っても自由、といわれると、つい「何をしたらいいんだろう?」と考えてしまいますね。
まずは何でもいいから作ってみましょう。先日旅行してきたニューヨークの地下鉄で撮影した写真を中心に、一冊のモノクロ写真集を作ってみることにします。

撮影した写真は全てiPadに読み込んであったので、iPad上で地下鉄の写真をある程度絞り込みます。

撮影した写真は全てiPadに読み込んであったので、iPad上で地下鉄の写真をある程度絞り込みます。

まず、候補の写真を一度全てモノクロでプリントアウトし、どれを掲載するか選んでいきます。PCやタブレット上でやっても良いのですが、一度出力した方が、全体を見ながら感覚的に作業できると思います。

とりあえず候補の作品を一度プリントアウトして広げてみます。

とりあえず候補の作品を一度プリントアウトして広げてみます。

作品を選んだら、机の上であれこれと並べ替えしながら、掲載順を決めていきます。並べていくうちに、左から右へとめくっていくのではなく、上から下へ(地上から地下深くへ)降りていく、というイメージがわいてきました。

読者に見せたい順番を考えて、あれやこれやと並べ替えてみます。

読者に見せたい順番を考えて、あれやこれやと並べ替えてみます。メリハリをつけるために、少しだけカラー写真を混ぜてみました。

[step2] 冊子の基本仕様を決める
次に、製作する冊子のサイズとページ数、綴じ方などを決めて、思い浮かんだイメージを、具体的な仕様に落とし込みます。
めくっていくごとに、地下へ地下へと降りていくイメージをカタチにするため、左綴じの本を横向きにして、壁掛けカレンダーのようにめくっていく形に決めました。

サイズは、気軽に手に取ることができるよう、B6サイズに決めました。ページ数は、本文+扉をあわせて32としました。

[step3] 出力紙を綴じてめくってみる
一度決めた掲載順どおりに、作品の出力紙をセロテープやホッチキスなどで綴じてみましょう。最初からページをめくっていきながら、時間軸やリズムを体で感じ、自分の考えた構成で良いかどうか、作品のチョイスはこれで良いかどうか、などを検討してみましょう。この時点で、「この作品を見せるにはどんなレイアウトがいいかな」といったところもイメージしておくとよいでしょう。

作品の出力紙を順番通りに綴じる。セロテープやホッチキスなどで簡単に。

作品の出力紙を順番通りに綴じる。セロテープやホッチキスなどで簡単に。


全体の構成と読み進めていく流れを確認。気になるところがあったら、ページの入れ替えや作品の差し替えなどを検討。

全体の構成と読み進めていく流れを確認。気になるところがあったら、ページの入れ替えや作品の差し替えなどを検討。

[step4] 台割またはサムネイルを作成
全体の構成を固めたら、ページ番号を振って「台割(だいわり)」を作ります。台割とは、どの作品がどのページに入るのかがひと目で分かる設計図のようなもの。Excelを使って、ページ番号と対応する画像ファイル名などを入れておくと、レイアウトや製本の際にミスを防ぐことができます。特に、ページ数が多い場合は作っておいた方が良いでしょう。

ただ、ページ数が少なくてわざわざ表を作るのは面倒だ、といった場合には、以下のようにサムネイルにしてまとめておくのも良いでしょう。ただこの場合も、ページ番号はあった方が良いと思います。

最も簡単なサムネイルの作り方。Macのファインダー上で画像ファイルを並べ替えて、 [ファイル名=ページ番号] にしてしまいます。

最も簡単なサムネイルの作り方。Macのファインダー上で画像ファイルを並べ替えて、 [ファイル名=ページ番号] にしてしまいます。

[step5] 表紙をデザインする
表紙は作品の「顔」にあたる部分。ここのインパクトが薄いと、せっかくの作品も手にとってもらえないかも知れません。候補のなかでも、特に目を引く作品をチョイスするか、デザイン・レイアウトをよく考えて作りましょう。

今回は、金網越しに見た地下鉄通路という、印象的なカットを表紙に使います。タイトルと著者名の書体には、ニューヨーク地下鉄のサインで実際に使われているHelvetica(ヘルベチカ)boldを選びました。

 写真を活かすため、文字のレイアウトはシンプルに徹します。HelveticaフォントはMacに標準で入っているものを使用。


写真を活かすため、文字のレイアウトはシンプルに徹します。HelveticaフォントはMacに標準で入っているものを使用。

[step6] 写真の補正を行う
掲載作品は決まりましたが、現状ではデジカメで撮ったままのデータです。Photoshopを使ってグレースケール(モノクロ画像)に変換し、トーンカーブを調整したりと、一枚一枚が印象的な写真になるよう、補正作業を行います。

もしPhotoshopがなくても、明るさ・コントラストが調整できる画像ソフトで十分です。ちょっとコントラストを高めて黒を引き締めるといった「ひと手間」をかけるだけで、作品っぽい画像になると思います。

モノクロ写真では「わざとノイズを入れると雰囲気が出る」といったテクニックもあるようです。

モノクロ写真では「わざとノイズを入れると雰囲気が出る」といったテクニックもあるようです。

このあとは、レイアウト〜印刷〜製本…という作業の流れになるのですが、次の記事「(手応え十分!自分をダイレクトに表現するアートブック「ZINE」の作り方(下)」でまとめてご紹介したいと思います。


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佐藤勝

佐藤 勝Writer

ライター/編集者/何でも屋。Web、デザイン、映像、アート、観光などの記事執筆や、企業・団体のコンテンツ制作など、色々やらせていただいております。 INSPIでは、生活やビジネスに役立つものづくりの情報から、面白スポットやまちづくりまで、さまざまなテーマの記事をお届けします。
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