電子版雑誌で顧客との接点を作る、ハースト婦人画報社の「マガジンクラウド」
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『エル・ジャポン』『ハーパーズ バザー』『婦人画報』『メンズクラブ』など、数多くのファッション・ライフスタイル誌を発行するハースト婦人画報社が新サービス「マガジンクラウド」をリリースしました。同社の電子版雑誌をまとめて配信する同サービスがどんなビジネスモデルなのか、考えてみたいと思います。
PC・モバイル端末でいろんな雑誌を試し読み
「マガジンクラウド」は、ハースト婦人画報社で発行している全雑誌の電子版をPC・スマートフォン・タブレットのブラウザで閲覧できるサービスです。
同社の雑誌ラインナップはファッション、カルチャー、インテリア、フード、ウエディングなどさまざまな分野をカバーする13タイトル。最新号とバックナンバーをあわせて500冊以上(6月1日時点)ものコンテンツを揃え、印刷版の雑誌を購入した方は全ページを、そうでない方でも約30~90ページの試し読みコンテンツが閲覧できるというものです。
試し読みだけなら、会員登録やログインをしなくても閲覧できます。
表紙のサムネイル画像を選択し、「もっと詳しく」をクリックすると各号の特集や記事の内容をチェックできます。とにかくすぐに中身を見たい場合は「試し読み」をクリックすると、ブラウザ上で雑誌のページをめくるように閲覧できる試し読みページに進みます。
この試し読みページ、雑誌タイトルによっては60ページ以上の大容量のものもあり、じっくり時間をかけて「立ち読み」ができるケースも。
そして、印刷版の雑誌を買った方(または、定期購読をしている方)は「電子版コード」が入手できます。そのコードを入手すると、追加料金なしで電子版の全ページが閲覧できるようになります。本屋さんで買った雑誌を家で読むのはいいけれど、電車などでの移動中はスマートフォンで読みたいな…という方は少なくないと思いますので、印刷版を買った方にとって嬉しい特典ですね。
そのスマートフォン版ページでは、メニューなどの操作系もスマホで使いやすいようなレイアウトに切り替わります。
(『メンズクラブ』2017年5月号)
試し読みページの電子ブックはモバイル通信でも動作が軽く、拡大・縮小操作も直感的にできます。専用アプリをインストールすることなく、ブラウザからすぐに閲覧できる点はユーザーのストレス軽減につながりそうです。
読者と雑誌が「出会う」機会を創出
マガジンクラウドにはたくさんのタイトル・号がずらりと並んでいるので、気になった表紙や特集タイトルがあったら、気軽に覗いてみることができます。
(『エル・デコ』2017年2月号)
もともと、同社は電子版コンテンツに力を入れていて、これまでも各雑誌の公式サイトで毎号試し読みができたのですが、こうして書店の雑誌コーナーのように表紙がずらりと並んだような見せ方だと、お目当ての雑誌以外にも興味を引かれる雑誌に出会う可能性が高まります。
そもそも、雑誌は毎号さまざまな切り口で力の入った特集を組んでいますので、毎号同じ雑誌を買うようなファン読者でなくても、雑誌棚で目に入ってきた特集タイトルが気になり、購入につながるというパターンは十分考えられます。1社でさまざまなジャンルの雑誌を展開しているからこそ、このように人と雑誌の出会いが生まれ、読者の獲得につながるような仕掛けが活きてくるわけですね。
雑誌によって生まれた接点を他の事業にも
雑誌を楽しみたいユーザーにとって便利なサービスと希望が充実したマガジンクラウドですが、ビジネス面での狙いは何でしょうか?
同社はプレスリリースのなかで、この仕組みを通じて利用者の閲読行動や関心などを分析して同社の商品やサービス展開に活用していくという展望を明らかにしています。
同社は雑誌コンテンツだけでなく、それらに連動した通販ビジネスやコンテンツマーケティングなどの事業も展開しているので、マガジンクラウドを通じて「読者がどの記事や商品に興味を持っているか」といったデータを分析することは、会社の事業戦略にとって大きな要素になるはずです。
また、マガジンクラウドの会員IDは全雑誌統一のものとなっていて、このサービスのユーザー自体も同社事業全体の顧客となり得ます。
単に雑誌読者のすそ野を広げるだけでなく、電子ブックの仕組みを通じて作られた顧客との接点を他の事業にも活用していくというビジネスモデルになっています。今後のサービス展開にも引き続き注目していきたいところです。
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