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データがない古い資料を電子ブック化した事例4選〜今昔物語集から建築資料まで

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デジタルデータのない古い資料やカタログなどを電子化したい、というニーズが増えています。最近はスマートフォンのアプリでもスキャニングできることもあり、以前よりもずっと手軽にデジタル化できるようになりました。
以前デジカタジャーナルでは、古くなったカタログや資料を電子化することによって、有用なコンテンツを生み出す可能性があるとお伝えしました。では、その本や資料が古すぎてデジタル化したデータがない場合はどうでしょうか。今回は、そうした紙媒体をオンラインで閲覧できるようにした、さまざまな事例をご紹介します。

※前回の記事はコチラ
旧製品カタログをわざわざ電子ブック化!?実は有力コンテンツになる可能性も

もくじ
1. 根室市民が復活! 野鳥のガイドブック
2. 認知症に効果的? 古い写真をデジタル化
3. 今昔物語集を電子化! 古典籍の損失防止に活躍
4. 建築図面の劣化を防止! ル・コルビュジエ・プランズ・オンライン
5. まとめ

根室市民が復活! 野鳥のガイドブック

北海道根室の市民団体「根室ワイズユースの会」が、41年前に発行された野鳥のガイドブックを、改訂の上でデジタル化を行ったそうです。最新の野鳥の画像など、修正を加えた「幻の名著」。1970年代の本が、時を越えてインターネット上に蘇ったのです。
図鑑「フィールドガイド根室」は全4巻から成る、市民有志が根室の自然を紹介したガイドブックです。1972年に出版されましたが、絶版となっていたそう。復活に取り掛かったメンバーは他に仕事を抱える中、ボランティアでの作業だったために、最新の野鳥の画像を取り込んだり、スマホの普及に対応したりと、計画から約8年の期間をかけて完成させたということです。

根室市民有志が復活させた、野鳥のガイドブック
https://www.hokkaido-ebooks.jp/?bookinfo=new-field-guide-nemuro

もはや閲覧することはかなわないと思われていた貴重なガイドブック。今では電波のあるところであれば、時間や場所を問わず、誰でも気軽に読むことができるようになりました。
こうした過去の想いを蘇生できるのも、電子ブック化する長所のひとつです。

認知症に効果的? 古い写真をデジタル化

回想法という言葉を聞いたことがあるでしょうか。過去の映像や写真、懐かしい物などに触れながら、想い出を語り合ったり話したりすることで脳を活性化させ、精神的な安定をはかる心理療法のひとつで、1960年代にアメリカの精神科医ロバート・バトラー氏が提唱しました。元々はうつ病の改善に用いられてきましたが、認知機能の向上にも効果的だということがわかり、現在では認知症の進行を遅らせるためのリハビリテーションとして実践されています。

他者とコミュニケーションを取ることや、昔の記憶を思い出そうとすることで、必然的に記憶力や集中力が使われます。楽しい思い出をたくさん思い出すことで、精神が落ち着くようにもなるようです。

そんな回想法に一役買っているのが、写真の電子化です。認知症患者を含む高齢者の過去の写真をデジタル化することにより、いつでも家族や友人と閲覧することができるので、折にふれ昔を思い出すきっかけが作れるようになります。
自身の過去の写真はもちろん、当時の街並や時事ネタなど生きてきた中で触れたさまざまな要素も重要です。そういった懐かしい写真を集めたWebサイトなども増えてきているため、手元にはない画像なども気軽に見せてあげられるようになりました。

2017年9月、首都大学東京ではボランティアを募り、荒川区の古い写真や映像のデジタル化を行ったとのこと。将来的には福祉施設などで利用してもらうため、区内の地域別のデジタル資料を作成していくようです。

古い写真などデジタル化 認知症予防 資料作成へ(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201708/CK2017082402000163.html

今昔物語集を電子化! 古典籍の損失防止に活躍

電子化においてもっとも難しいといえるもの、それはやはり歴史的典籍(古典籍)ではないでしょうか。災害・虫害など外的要因による損失のリスクや、作成時期が古ければ古いほど、紙そのものの劣化によって品質は損なわれていく古典籍。デジタル化することで貴重な資料を保存できるようになりますし、閲覧をデジタル版のみに絞ることで原本の劣化を緩めることにも繋がります。

しかし、古典籍は取り扱いが難しく、電子化する方法も専門性が高いため誰でも気軽に扱えるものではありません。また、古典籍は日本全国に点在しており、簡単に持ち出せるかというと、そうではないものが圧倒的です。前述したように電子化の方法は専門性が高いため、現地に持ち込んだ機材で、撮影ブースを設営しなければならないため、膨大な時間と手間がかかってしまいます。

国会図書館など資料が豊富にある施設では、徐々にデジタル化を進めているようですが、各地の資料館や寺社仏閣などに残されている古典籍は一筋縄ではいきません。
そんな状況の中、人間文化研究機構国文学研究資料館(国文研)と富士通グループのPFUが、「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」(歴史的典籍NW事業)の一環として、古典籍に特化した可搬型ブックスキャナを実際に持ち込み、初めての実証実験として所蔵本の電子化を行ったそうです。

プレスリリース:鬪雞神社で、可搬型ブックスキャナを用いた歴史的典籍の電子化実証実験を実施
http://www.pfu.fujitsu.com/news/2017/new170801.html

今回使用されたのは、「今昔物語集」。様々な学問の研究で知られる南方熊楠が研究に利用した写本5冊を電子化しています。
上からスキャンする方式なので、原本へのダメージを最小限に抑えつつ、容易なデジタル化が可能となりました。所要時間は、約二時間。半日〜一日がかりだった撮影ブースを設営する方法よりも、大幅に時間が短縮でき、高品質なデータを得ることができたとのこと。電子化技術の習熟度にかかわらず誰でも作業ができるので、今後古典籍の電子化に一役買うことは間違いないといえるでしょう。

こうした電子化技術が、歴史的資料の保存に役立つということは、電子ブック業界に関わる一人として非常に嬉しいことです。
他にも漫画や小説など絶版になった書籍をデジタル化することにより、浮世絵のように海外へ流出してしまうのを防ごう、といった取り組みも増えてきているようです。日本の文化がしっかりと国内で保全されていくことを、陰ながら応援したいと思います。

建築図面の劣化を防止! ル・コルビュジエ・プランズ・オンライン

歴史的資料といえばもうひとつ、挙げたい事例があります。それは、フランスの建築家ル・コルビュジエが遺した建築資料38,000点を高解像度デジタル撮影し、クラウドサービスにした「Le Corbusier Plans Online(ル・コルビュジエ・プランズ・オンライン)」です。このサービスは、エスキース、スケッチ、設計図面、出版物など、38000点を超える建築家ル・コルビュジエが全世界に建てた作品に関する唯一の資料体となっています。

同サービスが対象としているのは大学などの学術機関。教員と学生間で資料やメッセージのやり取りもできます。
前述の通り、非常に膨大な資料の数ですが、年代や国はもちろん、プロジェクト名や進捗状況、任意のキーワードなどあらゆる角度から検索ができるため、時間をかけることなく、目的のデータにたどり着くことができるはず。高解像度デジタル撮影なので、精細で高品質な画像を閲覧していただけます。

建築に限らず、美術資料など歴史的・学術的価値がある様々なデータは、整理がついていない状態で保管されていることもしばしばあります。先述の古典籍と同様、古いものほど劣化は進んでしまいますし、不慮の事故で資料が失われてしまう可能性もあります。手間はかかりますが、こうしてデジタル化しておくことで、何百年先の志を同じくする人々に届くかもしれません。紙媒体や原本は高い価値があり、素晴らしいものであるからこそ、そのものを失わないよう、あらゆる取り組みがされていくべきなのかもしれません。

Le Corbusier Plans Online(ル・コルビュジエ・プランズ・オンライン)
http://echelle-1.net/

まとめ

こうして見ると、デジタルデータのない資料でも電子化しようという動きが高まってきているのがわかりますね。ご紹介してきたように、多くの人の目に触れるブックや、医療的価値もしくは歴史的価値のある資料の保存を目的とした電子化はもちろん重要ですが、たとえば会社の過去パンフレットや資料、お店の歴史がわかる本や冊子など、電子化することで、ずっと遺しておくことができるのです。飲食店などでは、過去のメニューを復刻させ、当時のメニューと並べてみる、なんていう試みもおもしろいかもしれません。

電子化と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、まずはぜひ試してみてください。

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